「南フランスの白い刺繍 ブティ」制作日記

玉井さんはあのあと無事に2度の新刊会議を突破しました。私は作品サンプルと本当にラフなラフ画を送っただけで、あとは玉井さんに任せて祈るしかなく、たまに祈りながら、玉井さんが戦っていたであろう3ヶ月ほどを過ごしました。

出版が正式に決まってから初めての打ち合わせは、最高気温33度の7月某日。お茶の水駅から誠文堂新光社へ歩いて向かいます。

到着すると、誠文堂新光社の玉井さんと、この日、はじめましての佐々木さんがいました。佐々木さんはこれから一緒に本を作っていく編集者さんで、ご自身も旅の本を何冊も出されています。

「これどうぞ〜」と佐々木さんがバッグから取り出したのは、佐々木さんセレクトのお菓子詰め合わせでした。佐々木さんのお気に入りの郷土菓子が色々入っていて、中でも紫蘇のお煎餅がとてもおいしくて心を奪われました。あまりにおいしくて、ネット検索してみると通販で買えることが分かり、早速取り寄せようと思ったものの、送料が煎餅の2.5倍くらいするので、未だに躊躇しています(2024年6月現在)。

さて、この日の打ち合わせは、前回とは異なりもう「仮」の話ではありません。本の大きさ、ページ数、刊行日、価格といった本の仕様は会議を経て決まっています。私たちが話し合うのは、スケジュール、提供してもらう材料の候補などの具体的なことから、本の雰囲気のような抽象的なことまで様々です。

佐々木さんから「どんな雰囲気がいいですか?」と聞かれ、「なんか、暗い感じがいいです」と語彙力ゼロな私の答えを一瞬で理解してくれた佐々木さん。歴史を感じさせるヴィンテージ感とか、立体感を出す陰影とか、ブティは白いから明るすぎると模様がよく見えないとか、私の言いたかったことをパッと分かってくれて、「では暗い感じでいきましょう」となりました。本の輪郭が薄ぼんやりと見えてきたように思います。